我が国への伝来
さつまいもの伝来ルートは何種類かあると言われていますが、すでに紀元前1000年ごろに南米から海路ポリネシアに伝わったとも言われています。記録に残っているものによれば、16世紀にはインド、そしてマレー、インドネシア、フィリピンヘと伝わり、中国の福建省には1584年に伝えられています。
我が国には、1597年に宮古島に入ったのが最初と言われています。琉球へは福建から1605年に入って栽培され始め、1609年以降薩摩の領有支配に伴って薩摩へと伝わり、主に九州地方で栽培されるようになりました。そして江戸時代初~中期のたび重なる飢饉によって救荒作物として注目され、西南暖地を中心に全国に広く普及していきました。
「蕃藷考」という古書に、江戸時代の中ごろ、青木昆陽が関東に伝えた当時の栽培方法が記録されています。最初はやりかたがわからないので、いもをヤマノイモのように切って植えたようです。けれども、この作り方では腐敗が多くて欠株ができ、収量が上がらなかったために現在のような苗の移植栽培に移行したようです。
江戸時代の後期には、すでに苗床で苗をつくり、施肥作畦、採苗、挿苗、貯蔵などが行われていました。収量も10アール当たり1500㎏と現在の水準とあまり変わらない多収をあげているのが注目されます。
現在の栽培状況
さつまいもの作付面積は2006年のデータで見ると世界全体で約900万ha、 生産量1億2千4百万tで、じゃがいもの約半分の規模となっています。アジアが全世界生産の9割を占め、特に中国は1億tで世界の81%と群を抜いています。ナイジェリア、ウガンダ、インドネシア、ベトナム、タンザニア、日本、インドなどがこれに次ぐ主産国です。
日本では第二次大戦後の大増産期に作付が急増(ピークは昭和30年の700万t)しましたが、その後、食生活が安定化するとともに生産は激減しました。現在では4.0万ha、100万t程度の水準です。しかしながら、その用途は青果用や焼酎原料用、でん粉原料用、菓子用等の加工食品用と幅広く、関東や南九州の畑作地域においては地場産業の振興になくてはならない重要な作物となっています。